ハイレベル英文読解⑧

さて、いよいよ読解のための英文法講義も最終回です。まずは倒置の説明から入っていきます。倒置には2つのパターンがあることを理解しましょう。

★倒置のパターン

その1:文頭の否定語・準否定語・onlyが文(後の動詞)を修飾する場合 / 仮定法のifを省略する場合→後続の文(主節)が疑問文のカタチになる。

e.g.) Never have I seen such a nice boy.「私はそんな素敵な男の子を見たことがない。」

e.g.) Little did I dream of seeing you here.「あなたにここで会うなんて夢にも思わなかった。」

上記の例文のように、否定語(no / not / never 等)・準否定語(few / little / rarely / hardly 等)・onlyが文頭にきて、それが文(後の動詞)を修飾する場合に、後続の文が疑問文のカタチになっています。これは、否定語・準否定語・onlyがある特定の語(例えば名詞など)を修飾しているのではなく、文全体(後の動詞)を修飾しているんだよ!ということを明らかにするために、後続の文を疑問文のカタチしてワンクッション挟んでいるのです。例えば、Only I〜と文が始まったら、onlyはIにかかっていると判断し、「私だけが〜」という意味で解釈されてしまいます。しかし、onlyがかかっているのが、文(後の動詞)である場合には、Only did I〜とすることで、didというクッションを挟み、このonlyはIにかかっているわけじゃないよ!ということを明らかにすることができます。

*文頭に否定語・準否定語・onlyが来ているのに倒置が起こらない?

文頭に否定語・準否定語・onlyが来たからといって、絶対に倒置が起こるというように思考停止してしまってはいけません。あくまでも、この場合倒置が起こるのは、否定語・準否定語・onlyが、文(後の動詞)を修飾するときであって、ある特定の語(例えば名詞など)にかかるときは、倒置は起きません。

e.g.) No one knows what became of him.「彼がどうなったか知る者はいない。」

この文では、否定語noは直後のoneにかかっていて「誰もいない人が〜」というように名詞を修飾しています。ですから、文頭に否定語が来ていても倒置は起きません。

e.g.) Not only does he speak English but he speaks French.「彼は英語を話すだけでなく、フランス語も話す。」

この文では、文頭の否定語は動詞speakを修飾し、「英語を話すだけでなく〜」というように文を修飾しています。従って、倒置が起きています。

e.g.) Not only Japanese but English is spoken in the classroom.「教室では日本語だけでなく、英語も話されていた。」

一方でこの文では、文頭の否定語はJapaneseを修飾し、「日本語だけでなく〜」というように名詞を修飾しています。ですから、文頭に否定語が来ていても倒置は起きません。

このように、文頭の否定語・準否定語・onlyが何にかかるのか?を考える必要があります。

★倒置のパターン

その2:英語の情報構造のルール→語順が変わる。

こちらの倒置のパターンは厳密に言うと、「語順転倒」というもので、先ほどの疑問文のカタチになる「倒置」とは区別して考える必要があります。

*英語の情報構造

・旧情報:当事者が既に分かっている情報

・新情報:聞き手にとって新しい情報 / 話し手が伝えたい重点情報

英語の情報構造は、旧情報と新情報からなり、一文の中で旧情報を先に持ってきて、新情報を文の右側に持ってくるというルールがあります。旧情報とは、既に分かっている情報、つまり既出で共有されている情報や、周知の事実などです。新情報とは、聞き手にとって新しい情報であり、それは話し手が伝えたいと思っている重要な情報であると言えます。まず、相手が分かっている情報を出して心の準備を与え、新しく一番伝えたい内容は最後まで取っておく、というイメージです。

 旧情報(old / given information)→  新情報(new / unknown information)

重要なこと、新情報を一文の中で右に持ってくるので、情報の焦点は一文の中で文の最後の方(動詞より後の部分)にくるということから、「文末焦点」や「右方移動」と呼ばれます。

しかし、いつも新情報を後ろに持ってこれるとは限りません。なぜなら、英語の語順はSVという並びが普通であり、Sに新情報がくる場合、文の最初の方に新情報がくることになってしまいます。こういった場合に、新情報をできるだけ文の後ろの方に持ってきたい、という情報構造上のルールから、語順を変えてVSのような並びにしていくのが、情報構造による倒置(語順転倒・右方移動)ということです。

e.g.) On the bench was lying a small cat.「ベンチに子猫が横たわっていた。」

この文は、MVSという倒置で、Mの部分には「場所・方向」を表す副詞・前置詞句などがきます。入試ではとてもよくでるカタチです。ふつう、ネコがベンチの上にいるということを人が知覚するとき、「ベンチの上になんかいる!」→「ネコか!」という流れになりますよね。ですから、「ベンチの上に」が旧情報、「ネコだ」というのが新情報ということです。情報構造上のルールに従って、MVSという倒置文ができています。

e.g.) She passed the exam and so did Ken.「彼女は試験に合格し、ケンもまた合格した。」

肯定文に続けて、So V S 否定文に続けて、Nor (Neither) V Sで「Sもまた〜」という意味を表します。この文では、so did Kenの部分の代動詞didは、前に出てきたpassed the examを指していることがわかります。「試験に合格した」ことは前に出てきたものなので旧情報、「ケンも」ということは新情報です。この文でも、情報構造上のルールでV Sという倒置が起きているわけです。   

e.g.) Happy is a man who has many friends.「幸せなのは友達がたくさんいる人だ. 」

e.g.) What made him angry we didn't know.「彼がなぜ怒っているのか私たちには分からなかった. 」

e.g.) We often leave undone those things.「私たちはそれらのことを, やらないままにしておくことがよくある. 」

最初の例文は、CVSという倒置、2つ目の例文はOSVという倒置、3つ目の例文はSVCOという倒置です。いずれも、話し手が伝えたいと思っている重点情報を右方移動して、最後の方に持ってきているカタチになっています。アブノーマルな語順に出会ったとき、倒置であることを見抜き、正確に読解することはとても重要なので、倒置の原理からしっかりと理解しておいてください。以上で倒置の説明は終了です。

★分裂文(強調構文)

つづいて、文中のある部分を強調するための一つの型である分裂文(強調構文)の説明に入ります。

*分裂文(強調構文)のカタチ

It is 〜 that ー という型の〜部分に強調したい語句を入れ、〜部分の語を他のものから際立たせ、そこに焦点をクローズアップするという働きです。

e.g.) Ken broke the window yesterday.

この文の中のKenを強調したい場合、もともとの文を分裂させ、Kenを際立たせます。すると、It was Ken that broke the window yesterday. となります。分裂文を使用することで、昨日窓を壊したのは、A君でもB君でもC君でもなく、他でもないケンです。という他からは区別されたものとしてKenに焦点があたります。また、この文を疑問文にすると、Who was it that broke the window yesterday?となります。分裂文(強調構文)については、いずれIt is 〜 that ー の識別の箇所でも出てきますので、しっかりと理解しておいてください。

★否定

ここでは、全体否定と部分否定の違いを意識することを説明します。

*部分否定

notの後ろに強い語がくると「全て/常に/必ずしも/完全に~というわけではない、というように部分否定の意味になります。notと強い語句のコンビネーションで婉曲的な表現になるということですね。

強い語:all / every / each / always / necessarily / absolutely / completely / quiteなど

not quite「完全に~というわけではない」 ↔︎ not~ at all「全て~ない」

not ~ all「全て~というわけではない」↔︎ not ~ any「どれも~ない」

not ~ both「両方~というわけではない」↔︎ not ~ either「どちらも~ない」

not always「いつも~というわけではない」↔ never「決して~ない」

左側が部分否定、右側が全体否定となっています。部分否定は読解や英作文のときには特に注意するようにしてください。   

以上で、読解のための英文法講義は終了です!いやあ、お疲れさまでした。いよいよ来週からはテストゼミに入っていきます。これまで講義で説明してきた内容をノート等を参考に反復学習し、しっかりと完璧になるまで定着させてください。今まで説明してきたことを前提として、次のステージに進んでいきますので、くれぐれも遅れずについてきてください。来週以降のテストゼミでは、テキスト・ノート・辞書を必ず持参してください。それでは来週、テストゼミでお待ちしています!

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