ハイレベル英文読解⑦

さて、いよいよ文法講義も残すところあと2回となりましたが、今回は比較文の読み取り方を解説します。

★比較文読解のポイント

ー 比較級 than 〜や、ー as ... as 〜 の比較文の読み取りでは、①ー部分と〜部分の比較対象を考えること、②〜部分の省略・倒置・代動詞に注意すること、がポイントです。

①比較対象を考える(比較対象は対等)

例えば、The climate of Japan is milder than that of the UK.「日本の気候はイギリスの気候よりも温暖である。」という文では、The climate of Japan「日本の気候」とthe climate of the UK「イギリスの気候」を比較しているため、ー than the UK とするのは誤りで、the climateをthatで受けて、ー than that of the UK としなくてはいけません。また、It is warmer here than in Japan.「ここは日本よりも暖かい。」という文では、here「ここ」という場所を表す副詞と、in Japan「日本において」という場所を表す副詞句を比較しているため、ー than Japanとinを抜かすのは誤りということになります。このように、比較文の読み取りの基本として、ー部分と〜部分で何と何を比較しているのか?を考える必要があります。

②比較対象(〜部分)の省略・倒置・代動詞に注意する。

例えば、He is not as kind as I thought he was.「彼は私が思っていたほど親切ではなかった。」という文では、比較対象(〜部分)で、as I thought he was (kind)と省略が発生しています。さらに、意味が明確な範囲で、as I thought (he was kind)と省略することも可能です。従って、比較対象の意味がよくわからないときは、省略を補って考えることが必要です。また、She enjoyed the game as much as Tom did.「彼女はトムと同じくらいそのゲームを楽しんだ。」という文では、as Tom enjoyed the gameという部分を代動詞didで受けています。この文では、as did Tomと倒置が発生する場合もあります。どのような原理で倒置が発生するかは次回の「倒置」の項目で説明することとします。

★notやnoを使った比較表現(not+比較級 / no+比較級)

notやnoを使った比較表現は多くの受験生が苦手とするところですが、それは表面的な意味の暗記しかしておらず、なぜそのような意味になるのかという原理を理解していないためです。まずは、否定語であるnotとnoの違いから考えていきましょう。

・not→文否定「〜ではない」

notは文否定を行い。「〜ではない」という意味を表します。例えば、I don't  like him. という文の意味は、「私は彼が好き」→「ではない」となります。従って、not〜は「〜ではない」や「〜ということはない」という意味になるのです。そこから発展させると、

not more than〜:「〜よりも多い」ということはない→「多くても(せいぜい)」=at most

not less than〜:「〜よりも少ない」ということはない→「少なくとも」=at least

という意味を表すわけです。

・no→「存在しない」(ゼロである)

noは結びついた語が「存在しない(ゼロである)」という意味を表します。例えば、There is no time. という文の意味は、「存在しない(ゼロの)時間がある。」→「時間がない」となります。ここから発展して重要なことは、noが比較級と結びつくと「差がない(差がゼロである)」という意味を表すということです。

*最重要ポイント=no+比較級は「差がない(差がゼロである)」を表す

この原理をおさえたら、実際に英文で確認していきましょう。

e.g.) He is no busier than Tom.

→この文では、「彼とトムは同じくらい忙しい」ということがわかります。なぜかというと、no busierと、no+比較級が使われているため、先ほどの原理からして「彼とトムの忙しさには差がない」ということになるからです。では、忙しさが同じことを表したいのなら、He is as busy as Tom. とすればいいのではないか?という疑問が思い浮かびますが、no busierとすることによって、相手が持っているbusierのイメージを否定したい、というニュアンスが出ることになります。つまり、相手は「彼の方が忙しい!」と思っているが、それを否定し、「彼とトムの忙しさには差がないんだよ!」という意味を表しているわけです。「君は彼のほうが忙しいとイメージしているかもしれないが、そうではなくて、彼とトムは忙しさに差がない(no+busier)んだよ!」=「彼とトムは同じくらい忙しい」という意味を表しているわけです。では、no+比較級の原理について理解できたところで、”受験生泣かせ”のイディオムを確認していきましょう。

no more than〜:相手が持っているmoreのイメージを否定して→「たった〜」=only

no less than〜:相手が持っているlessのイメーイを否定して→「〜もの」=as much as

丸暗記してしまう前に、さきほどの原理から考えて理解していきましょう。例えば、It is no more than three kilometers to the sea.「海までたった3kmしかない。」という文では、「海まで3km以上ある!」と思っている相手に対し、そのイメージを否定して「3kmと全く差がない距離だよ!(3kmだよ)」という意味を表します。3km以上あると思っていた相手方からすれば、「え!?3kmしかなかいんだ」となりますから、no more then〜は「たった〜」という意味を表すのです。また、He earns no less than 500,000 yen a day.「彼は1日に50万円も稼ぐ。」という文では、「彼は50万円以下しか稼げてない!」と思っている相手に対し、そのイメージを否定して「50万円と全く差がない金額だよ(50万円だよ)」という意味を表します。50万円以下しか稼げてないと思っていた相手方からすれば、「え!?50万円も稼ぐんだ」となりますから、no less than〜は「〜もの」という意味を表すわけです。

いやあ!頭をつかう事項ですね、比較は。しかし、大学以上レベルの言語学や文法理論ではバリバリの数学的思考を使っていくため、大学受験レベルでも英語という科目は頭を使って、論理的に考えていく必要があるということですね。ただの暗記では、太刀打ちできない出題がたくさんあることにも納得できます。では、no+比較級の原理を応用して、もうすこし思考訓練をしていきましょう。

★no+比較級の応用

no more 〜 than ー「ーでないのと同様〜でない」の捉え方

これも”受験生泣かせ”の構文ですが、今まで学んできたno+比較級の原理を応用すれば、簡単に理解することができます。まず、この構文の特徴は、than以下のー部分には明らかに偽りの命題or相手がわかっている偽りの命題を持ちだして、主節の〜部分で話者が伝達したい内容を述べる、ということです。

e.g.) A whale is no more fish than a horse is.「馬が魚でないのと同様、クジラも魚でない。」=A whale is not a fish any more than a horse is.

→非常に有名ないわゆる”クジラ構文”と呼ばれる英文です。この英文を見た当時高校生だった私は「この英文書いたやつバカなの?もっと、イルカが魚でないのと同様、クジラも魚ではない、とかのほうがいいじゃん、、、」とか思っていましたが、実際には「馬が魚でないのと同様〜」という部分には、大きな意味があったのです。この文で、話者は「クジラが魚でない」ということを伝えたいのであり、そのお膳立てとして「馬が魚でない」という明らかな命題を持ちだしているのです。つまりここでは、相手は「馬が魚でない」ということはわかっており、そのことと「クジラが魚でないこと」は、差がない(同じ)ことだよ!(no+比較級)と話者は伝えようとしているのです。また、You are no more young than I am.「私が若くないのと同様、あなたも若くない。」という文では、相手が「私は若くない」ということをわかっており、そのことと「あなたも若くない」ということには差がない(同じ)ことだよ!という意味を表しているわけです。尚、no more 〜 than ー の構文は、not 〜 any more than ー という構文に書き換えることが可能です。一方で、肯定の命題を表す場合は、no less 〜 than ー の構文を用います。これも原理は先ほど説明したものと同様です。例文とともに確認しておきましょう。

★その他の比較表現→定型表現を例文とともに覚えて、使えるようにしておきましょう。

★最上級表現基本事項→テキスト及び例文参照。

★最上級相当表現

最上級相当表現とは最上級を用いずに、原級や比較級を用いて「最も〜だ」という最上級の意味を表現するものです。具体的には、①Sを工夫する、②比較対象を工夫する、ことによって最上級相当表現を作ります。

①Sを工夫する

「何もないものが〜」のように、否定語の主語と比較を行うことで最上級を表します。

e.g.) Nothing is more precious than time.「時間より貴重なものはない.」

e.g.) No experience gives me as much pleasure as reading.「読書ほど私に多くの喜びをあたえてくれる経験などない.」

②比較対象を工夫する

「他のどんなものよりも〜」のように、比較対象の工夫により最上級を表します。

e.g.) She is cleverer than any other student in my class.「彼女は私のクラスの他のどんな生徒よりも賢い.」

e.g.) This experience is more precious than anything else.「この経験は他の何よりも貴重である.」

以上で、比較文の読み取りの解説は終了です。いよいよ夏期講習も近づいてきたところですが、夏や夏以降の学習を意味のあるものにするためにも、語彙・文法・文構造理解の英語基礎力をいち早くみにつけられるように頑張っていきましょう!それでは次回は、文法講義のラストにふさわしい「倒置」を主に解説します。例に漏れず、次回の内容も文法書等で確認しておいてください。それでは、文法講義の最終回に向け気合を入れていきましょう!

(Y)our Learning Methods

担当講座の大学受験英語・民間英語試験に関する学習法を提供